【成人向き】おはよ♡昨日はすごかったね、朝ごはん作ったよ♡チュッ♡【前編】
音声:Charon
『蜜の朝餐(デジュネ)~氷の女帝、理性の崩壊~』
【あらすじ】
「残さず食べなさい。……私の愛(すべて)よ」
オフィスでは《氷の女帝》と恐れられる三十四歳の独身管理職・玲子。 冷徹な仕事ぶりで周囲を震え上がらせる彼女には、誰にも言えない秘密があった。 それは毎朝、一回り年下の部下である「俺」の部屋に押しかけ、バターと脂、そして自身の重すぎる愛情をたっぷりと注ぎ込んだ高カロリーな朝食(エサ)を与えること。
「管理」という名目で部下を飼育しようとする玲子と、その歪んだ愛を胃袋で受け止める「俺」。 職場での絶対的な主従関係は、夜の帳(とばり)が下りるにつれ、甘く、粘着質な情事へと変貌していく。
理性のタガが外れた熟れた果実が、雄(オス)の熱に溶かされた時―― 彼女は鬼上司の仮面を脱ぎ捨て、ただ愛を貪る一匹の雌へと堕ちていく。
オフィスとキッチン、二つの密室で繰り広げられる、濃密で重(ヘビィ)な社内恋愛譚
第一章:『蜜の朝餐(デジュネ)~氷の女帝はエプロン一枚~』
午前五時半。 湿り気を帯びたシーツに絡め取られた意識は、無機質なアラームではなく、もっと生々しく、濃密な芳香によって現世へと引き戻された。鼻腔を蹂躙するのは、焦がしたバターの背徳的な甘さと、獣の脂が爆ぜる匂い。それはワンルームの薄い空気を犯し、俺の本能を強制的に勃起させるかのような暴力性を孕んでいた。
「……なんという、朝だ」
渇いた喉で呻くと、キッチンという名の聖域から、冷たくも艶を含んだ声が降ってくる。
「いつまで寝ているの。……私の料理が、冷えてしまうでしょう」
薄闇の中に浮かび上がったシルエットに、俺は息を呑んだ。 そこにいたのは、我が社の全部署を震え上がらせる《氷の女帝》。三十四歳、独身。 だが今、俺の目の前にいるのは、スーツという名の鎧を脱ぎ捨て、頼りないエプロン一枚をその豊かな肢体に纏っただけの、一匹の雌(メス)だった。
背中で結ばれた紐が、白い裸身に食い込んでいる。 腰に手を当て、不満げに俺を見下ろすその瞳は、熱情で潤んでいた。 「私の愛液(あい)……味わう覚悟はできているのかしら」
もちろん、言葉通りの意味ではない。だが、彼女が朝の五時から化粧を施し、その柔らかな胸を揺らしてフライパンを振っていた事実が、すでに致死量の毒のように俺の理性を蝕んでいた。
俺は気だるい体を起こし、テーブルへ視線を這わせる。 そこには、淫靡な狂宴が広がっていた。
皿からはみ出すほど分厚いトーストは、たっぷりとバターを吸って濡れそぼっている。その横には、男根を思わせる極太のソーセージが脂の汗をかいて鎮座し、黄金色のスクランブルエッグが、いまにも崩れ落ちそうなほどトロトロに半熟の肢体を晒していた。 洋風の献立の隅には、場違いな「漬物」が添えられている。それはまるで、なりふり構わぬ彼女の独占欲そのものだ。
「……先輩」
「なによ」
「これは朝食ですか? それとも……俺を殺すための罠ですか?」
「失礼な子ね。ただの、愛のこもった普通のご飯よ」
三十四歳という年齢は、果実で言えばもっとも甘く熟れ、腐り落ちる寸前の芳醇さを放つ時期だ。彼女の言う「普通」は、その豊満な肉体と同様、カロリーの概念を逸脱している。
「野菜が……ありません」
「昨日、私の前で野菜ジュースを飲んでいたじゃない」
「それで帳消しになると?」
「なるわ。……私のルールではね」
理屈ではない。そこにあるのは、俺を飼い慣らすための絶対的な支配のみ。 俺は観念し、手を合わせた。昨夜の残業――いや、情事の疲れが残る胃袋にはあまりに重い、愛の塊。
震える手で、半熟の卵を掬い、口へと運ぶ。 ……悔しいが、舌の上で卵液が官能的に解け、濃厚なコクが口腔内を埋め尽くしていく。
「……くっ、美味い」
「当たり前でしょう」
先輩は豊満な胸の下で腕を組み、ふん、と鼻を鳴らした。だが、上気した頬と、微かに潤んだ瞳は隠せない。
「異常なほど滑らかだ……。どうやったんですか、これ」 「べ、別に……。ボウルで湯煎しながら、ゆっくりとかき混ぜただけよ」
「湯煎? この早朝から、そんな手間を?」
「……欲求不満の、暇つぶしよ」
嘘だ。 それはビジネスホテルの厨房ですら敬遠するような手間だ。それを彼女は、ただ俺の舌を喜ばせるためだけに行ったのだ。
「……先輩」
「なによ、しつこいわね」
「これ、全部俺の体を想ってのことですよね」
「ち、違うわよっ!」
間髪入れずに否定するその声が、裏返る。彼女は顔を背け、髪の間から覗く耳まで朱に染めていた。
「余り物があっただけ……それに、一人で貪るのも、その……虚しいじゃない」
それを世間では「貴方と交わりたい」と言うのだ。 ふと視線が合う。彼女は慌てて目を逸らし、鬼上司の仮面を貼り直そうとするが、エプロンの隙間から覗く太腿は微かに震えていた。
「……残さず、全部飲み込みなさい。一滴でも残したら、許さないから」
命令口調。だがそれは、俺の痩せた体を自らの料理(からだ)で満たしたいという、歪んだ母性の裏返し。
「毎日こんな食事じゃ、太りますよ」
「いいじゃない。そのガリガリの体……私の料理で太らせて、私色に染め上げてあげるわ」
その言葉に、胃袋だけでなく、下腹部の奥に熱い塊が灯る。 俺は濃厚なミルクでプリンを流し込みながら、悟った。 この女(ひと)は、絶対に言葉では「好き」と言わない。だが、この暴力的で、粘りつくように重い朝食のすべてが、彼女の性愛そのものなのだ。
今日も東京の朝は早い。 そして俺は今日も、この愛すべき上司「重すぎる愛」に胃袋を掴まれ、逃れられぬ飼育小屋の中で、甘い溜息を漏らすのだった。
第二章:『蜜の残り香~女上司の給湯室~』
午前九時。 コンクリートに囲まれた東京の朝は、砂漠のように乾いている。 満員電車の淀んだ呼気に揉まれながら、俺は下腹部の奥底に、消えることのない熱い鉛のような重みを感じていた。
それは、五時半の情事――いや、狂宴の名残だ。 黄金色の脂が滴るスクランブルエッグ。バターを限界まで吸い込み、濡れたように重くなったトースト。そして、逃げ場のないほどに詰め込まれた、彼女の歪んだ愛情という名のカロリー。
「……まだ、中にいる」
俺の胃袋という内臓は、今も彼女に犯され続けている。物理的な質量を持った愛が、消化されることを拒むかのように鎮座し、俺の肉体を内側から支配していた。
オフィスに足を踏み入れた瞬間、肌を刺すような冷気に包まれる。 空調のせいではない。フロアの中央に、絶対零度の発生源が存在するからだ。
「この資料、やり直しよ」
鼓膜を愛撫し、同時に凍りつかせるような低音。 そこにいるのは、数時間前、俺の薄汚い部屋でエプロン一枚を纏い、上気した顔でプリンを押し付けてきた愛らしい女性ではない。
一分の隙もなくタイトスカートに包まれた腰のライン。感情というノイズを完全に排除し、冷徹な光を放つ瞳。 彼女は、全社員が畏怖し、ひれ伏す《氷の女帝》そのものだった。
「言い訳を聞いている時間はないわ。……無能ね」
新人の青年が、蛇に睨まれた蛙のように硬直している。 その光景に、俺の股間が微かに疼く。 ……愚かな男たちだ。貴様らが恐れるこの冷たい氷の下に、どれほど熱く、熟れきった果実が隠されているかを知らないとは。 俺だけが知っている。今朝、彼女がどんな顔でフライパンを振り、どんな甘い声で俺を飼育しようとしたかを。 その背徳的な優越感だけが、重たい胃を抱える俺の支えだった。
昼下がり、逃げ込むように入った給湯室。 湯気が立ち込める狭い密室でコーヒーを淹れていると、背後から音もなく忍び寄る気配があった。 それは、高価な香水の奥から漂う、微かな、しかし俺の記憶を強烈に刺激するバターの残り香。
「……ちゃんと、体に馴染んだ?」
耳元に吹きかけられる、湿った吐息。 驚いて振り返ると、先輩が周囲を警戒しながら、俺との距離をゼロにする勢いで立っていた。 さっきまでの氷の仮面はどこへやら、その潤んだ瞳は、俺の反応を貪るように見つめている。
「朝ごはんのことですか?」 「しっ! 声が大きいわよ」
即座に唇を指で塞がれる。その指先すら、艶かしく見えた。 「食べたならいいけれど……その、胃、苦しくない?」
「……壊滅的です。貴女の愛が、重すぎて」
「……だから言ったじゃない。無理しなくていいって」
嘘だ。 むしろ「残したらお仕置きよ」と、最後のひと口まで俺の喉にねじ込んだのは貴女だ。 だが、その言葉に含まれた湿度は、明らかに上司と部下の境界線を溶かしていた。職場用の氷が、俺の前だけで融解し、甘く粘りつく蜜へと変わっていく。
「先輩。今、とろけるほど優しい顔をしていますよ」
「……は?」
瞬時に、空気が凍てつく。
「勘違いしないでちょうだい。部下が体調不良で倒れたら、私の管理能力が問われるだけよ」
「はいはい、そういうことにしておきます」
俺が苦笑すると、先輩はばつの悪そうに視線を逸らし、そして給湯室の熱気に紛れるような声で付け加えた。
「……あのプリン、甘すぎじゃなかった?」
「そこ、気にするんですか?」
「別に。……ただの品質管理よ。自分の所有物が、正常かどうか確かめただけ」
ツン、と顔を背けるその仕草。 うなじの後れ毛が汗ばんでいるのが見えた。「品質管理」という言葉に隠された、独占欲という名の情欲。彼女は確認したかったのだ。俺の体が、まだ彼女の味に染まっているかを。
午後の会議は、公開処刑の場だった。 「詰めが甘い」「浅はかだ」「やり直し」――彼女の唇から紡がれる言葉は、鞭のように男たちのプライドを切り裂いていく。
だが――俺の資料の番になった時だけ、その鞭が止まった。
「……ここは、よくできているわ」
一瞬だけ、視線が絡み合う。 ほんの一秒にも満たない刹那。眼鏡の奥の瞳が、とろりと濁ったのを俺は見逃さなかった。 その瞬間、俺は確信した。 この人は、職場では冷酷な女王でありながら、その実、俺というフィルターを通した時だけ、欲情した雌の顔を見せるのだと。 会議室の無機質な空気の中で、俺たちは視線だけで濃厚な交わり(セックス)を交わしていた。
定時後。人気(ひとけ)の消えたオフィス。 静寂が支配するフロアで、コートを羽織った先輩が、すれ違いざまに囁いた。
「……今日は、早く帰りなさい」
「珍しいですね。残業命令ではなく?」
「朝……重かったんでしょ。私の愛が」
俺は思わず息を呑んだ。まだ気にしていたのか。いや、むしろ楽しんでいる。 俺が彼女の料理(愛)に苦悶する様を。
「先輩」
「なによ」
「ギャップが激しすぎます。……心臓に悪い」
「……うるさいわね。早く来なさい」
そう言って、彼女はコツコツとヒールを鳴らして歩き出す。 そのリズムはいつもより僅かに遅く、そして艶かしい。まるで、発情した猫が雄を誘うかのように。
今日も東京の夜は、いやらしく輝いている。 ネオンの海へ漕ぎ出す二つの影。 俺は今夜も、この冷たくも熱い《氷の女帝》の裏側を暴き、その全てを飲み干すために、彼女の揺れる腰を追いかけた。
『第三章 摩天楼の影、濡れた密室(タクシー)』
エレベーターホールを抜け、東京の夜気に触れた瞬間、彼女の纏う空気がふわりと緩んだ。 カツ、カツ、とアスファルトを叩くヒールの音。 昼間、部下たちを恐怖の底へ叩き落としてきたその冷徹なリズムは、夜の帳(とばり)が下りた途端、雄を誘う発情した猫の足音へと変貌を遂げる。
「……ねえ」
数歩先を行く彼女が、振り返らずに声を絡めてきた。 街灯のオレンジ色が、乱れ一つない髪の輪郭を黄金の光輪(ハロー)のように縁取っている。だが、その背中からは、隠しきれないフェロモンが立ち上っていた。
「今夜の食事……どう処理するつもり?」
その問いかけに、俺の胃袋が微かに痙攣した。 午前五時半の狂宴――あの「愛の質量保存の法則」を無視したかのような朝食バイキングが、未だ消化されきらず、俺の内壁にへばりついているのだ。 だが、ここで拒否権などない。
「そうですね……軽く、外で済ませますか?」
「だめよ」
即答だった。 彼女はくるりと踵(きびす)を返し、俺の領域へと踏み込む。 その瞳は、夜の闇よりも深く、じっとりと濡れていた。昼間の会議室で見せた絶対零度の輝きはどこへやら、そこにあるのは、飢えた雌(メス)の揺らぎだ。
「外食なんて、不純物が混ざるわ。……私が、与えるから」 「え」
「材料、まだ余ってるし。……私の味が、嫌なの?」
上目遣い。 三十四歳、管理職。年収は俺より遥かに上。そんな社会的強者が、俺の肯定の言葉ひとつを、まるで愛液を請うように待ちわびている。 この歪なアンバランスさに、俺の股間が反応しないはずがなかった。
「……お願いします。先輩の手料理で、満たされたいです」 「ふん。……調子のいい子」
彼女はプイと顔を背けたが、その耳朶(じだ)が熟れた果実のように赤く鬱血しているのを、俺は見逃さなかった。 ああ、なんて「淫ら」で――いや、愛おしい人なのだろう。
俺たちは流しのタクシーを拾い、後部座席へと滑り込んだ。 そこは、都会の喧騒から切り離された、走る密室(サンクチュアリ)。
「ん……」
ドアが閉まるや否や、彼女の柔らかな肢体が、液体のように俺に密着してきた。 太腿と太腿が押し付け合い、ナイロン越しの体温が俺の肌を焦がす。 鼻腔をくすぐるのは、高価な香水ではない。俺の部屋にある、安物のシャンプーの香りだ。 それが意味する事実に、俺の征服欲が疼く。この《氷の女帝》は、俺の色に染まっているのだ。
流れるネオンが、ストロボのように彼女の横顔を照らし出す。 ふと、彼女の手がシートの上を這い、俺の手の甲を指先でなぞった。 昼間、冷酷にキーボードを叩き、部下を戦慄させていたその指先が、今は熱を帯び、俺のぬくもりを貪るように彷徨っている。
「……今日は、締め付けすぎたかしら」
独り言のような、懺悔。
「会議のことですか?」
「みんな、怯えていたわ……」
「まあ、貴女はサディスティックな鬼上司ですから」
「……意地悪ね」
彼女が小さく喘ぐように呻く。 俺は掌を返し、彼女の華奢な指を強引に絡め取った。恋人繋ぎ。いや、互いを縛り合う鎖のような結合。 指の股から伝わる脈動が、彼女の緊張を解きほぐし、同時に情欲のスイッチを入れていく。
「でも、俺は知ってますよ。あの氷の仮面の下に、とんでもなく甘く、乱れやすい素顔があることを」
「……馬鹿」
彼女は俺の肩に、こつん、と頭を預けた。 重い。だが、その重さこそが、彼女の愛の質量だ。
「帰ったら、何を作ってくれるんですか?」
「……朝の残り」
「えっ、まだ続くんですか、あの宴が」
「嘘よ。……雑炊」
彼女は俺の肩に顔を埋め、首筋に熱い息を吹きかけながら囁いた。
「胃もたれ、してるんでしょう? ……優しく、とろとろに煮込んであげるから」
その言葉は、あまりに卑猥で、母性的だった。 雑炊。それは米が形を失うほど煮崩れ、卵液と絡み合う料理。 俺は直感する。彼女の作るそれは、きっとただの病人食ではない。大量の卵と、彼女の粘着質な愛情がたっぷりと注ぎ込まれた、飲む精力剤のような代物に違いない。
「先輩」
「なに?」
「愛が、重いです。……押し潰されそうだ」
「……うるさいわね。全部、受け止めなさいよ」
彼女は俺の手を、爪が食い込むほどの強さで握り返してきた。 その痛みは、決して離さないという執着の表れ。 痛いほどに愛おしいその痛みを感じながら、俺は確信する。 この重苦しい檻の中で飼育されることこそが、俺の至上の悦びなのだと。
タクシーは夜の海を泳ぐように、俺たちのマンション前へと滑り込む。 今夜もまた、甘くて重く、そして出口のない二人だけの宴が幕を開ける。
第四章 理性の決壊、あるいは甘美な泥酔
午後十時。 都会の喧騒から切り離された、松戸駅前の隠れ家的な個室居酒屋。 薄暗い照明の下、俺は目の前で進行する「事件」を目撃していた。
琥珀色の液体で満たされたグラス。その表面に浮かぶ氷が、カラン、と涼やかな音を立てて崩れ落ちる。だが、それ以上に急速に溶解しているのは、目の前に座る女性の「理性」だった。
「……なんで、こうなったのかしら」
彼女はすでに四杯目のハイボールを空にし、濡れた唇で五杯目の淵をなぞっている。 発端は、定時後に彼女が放った、「今日は一区切りだから、中へ入れていく?」という、酒への誘い文句だった。その言葉に含まれた熱量を、俺は見誤っていたのだ。
「先輩、そのペース……すでに致死量ですよ」
「うるさいわね。仕事終わりの一杯は、火照った体を冷やすための……鎮火作業よ」
頬を熟れた桃色に染め、とろんと潤んだ瞳でこちらを睨み上げる三十四歳。 そこには、昼間会議室で部下を震え上がらせていた《氷の女帝》の欠片もない。ただ、アルコールと情欲、そして激務から解放され、無防備に肢体を晒すひとりの雌(メス)がいるだけだ。
「今日の会議、さぁ……」
「はい」
「あなた、体つきが……変わったわね」
――来た。 アルコール濃度の上昇と比例して発動する、彼女の「品定め」モード。
「最初は正直、使い物にならないと思ってた。……顔だけの、未熟な青二才だって」
「それ、シラフで言われたら立ち直れないレベルの暴言ですよ」
「でも今は……まあ、悪くないわね。……ふふ」
彼女の視線が、俺の喉仏から胸板、そしてテーブルの下の下半身へとねっとりと這う。 それは上司の査定ではない。もっと根源的な、種としての選別だ。
「……先輩、完全に酔ってますね?」
「酔ってない」
即答する。だが、その唇は蜜で濡れ、ワイシャツの襟元から覗く首筋まで、桜色に染まっている。 「だってさぁ」 彼女はグラスを置き、テーブル越しに身を乗り出した。甘い香水と、肺腑から漏れるアルコールの熱い呼気が、俺の理性を揺さぶる。
「あなた、私のこと……欲情してるんでしょう?」
ドクン、と心臓が跳ねた。
「……自意識過剰ですよ」
「嘘。……私の目を見て言いなさい」
逃げ場はない。 彼女の瞳は、泥酔の中に鋭い知性を宿し、俺の本能を見透かしている。
「……私が、管理してあげないとダメなだけ」
アウトだ。 それは、上司と部下の境界線を越え、あまつさえ「飼い主」としての契約書にサインを迫るような発言だ。
「それ、セクハラですよ」
「言ってない! 今の、ノーカン! 忘れなさい!」
彼女は両手で顔を覆った。指の隙間から覗く耳たぶまで、熟したベリーのように充血している。
「……ねえ」
「はい」
「私、職場だと……怖いでしょ?」
「まあ……正直、雪女よりは」
「でも、今、可愛いって……思ってるでしょ」
図星を突かれ、言葉が詰まる。 彼女は俺の沈黙を肯定と受け取ったのか、ニヤリと捕食者のように笑い、テーブルの下で俺の膝に手を置いた。爪先が、太腿の内側を這う。
「ほら、身体が固くなった」
「……」
「この顔、私だけのものだから」
囁くような声。距離が近い。吐息が混じり合う距離だ。 「……はい?」
「他の女に見せないの。……独占禁止法違反でも、構わないわ。貴方を独占できるなら」
熱っぽい視線が絡みつき、俺の下半身を締め付ける。 俺の理性が、警報音を鳴らしながら瓦解していく音が聞こえる。
「先輩、顔、近いです」
「いいじゃない。減るもんじゃないし」
「減ります。俺の寿命と理性が、マッハで」
「……ねえ」
彼女の瞳が、急に揺らいだ。 それは、捨てられた子犬のような、あるいは美貌の衰えを恐れる王妃のような、切実な眼差し。
「私のこと……三十四歳のババあって、思ってる?」
年齢という名の呪縛。彼女はずっと、その数字に囚われているのだ。若い女には出せない、腐る寸前の果実のような芳醇さを持ちながら。
「思ってません」
「今、コンマ一秒の間があった」
「先輩の空耳です。……貴女は、誰より美しく、エロティックです」
「……ふーん」
不満そうに唇を尖らせる三十四歳。その仕草の破壊力は、若作りしたアイドルなど足元にも及ばない。
「でもさ」 彼女は急に真剣な表情に戻り、俺の太腿を掴む指に力を込めた。
「それでも一緒に……朝までいてくれるなら、いいかなって」
俺は言葉を失った。 これは、事実上の交尾(セックス)の申し込みではないのか。
「……先輩、それ、誘いすぎです。俺の理性が持ちません」 「うるさい。……今夜は、特別」
そう言って、彼女はふわりと俺の肩に頭を預けた。 ずしりとした重みと共に、彼女の高すぎる体温と、甘ったるい匂いが伝わってくる。
「……帰りますよ、先輩」
「んー……動きたくない」
「先輩」
「……名前で、呼んで」
心臓が、限界を迎える音がした。
「……先輩?」
「違う。……もっと、男として、私を呼んで」
俺は覚悟を決めて、深く息を吸い込んだ。 禁断の果実を、その芯まで味わうように。
「……玲子さん」
一瞬、彼女の肩がビクリと強張った。 そして、耳まで真っ赤に染まったまま、衣擦れのような音量で、小さく喘いだ。
「……ああっ、ずるい……」
そのまま、彼女の全身から力が抜けていく。 規則正しい寝息。――寝落ちである。 俺の肩で、無防備に口を開けて眠る氷の女王。その重みは、どんな高級な肉体よりも愛おしく、そして艶かしかった。
翌朝。 オフィスの給湯室で会った先輩は、昨夜の記憶を綺麗さっぱり喪失していた。 いや、喪失したふりをしているだけかもしれない。
「……私、昨日、変なこと言ってないわよね?」
「さあ? ただの楽しいお酒でしたよ」
「その顔、怪しいんだけど……」
俺は笑って誤魔化した。 言えるわけがない。「私だけのもの」という独占宣言も、俺の膝を這った指の感触も、そして俺の肩で眠ったあのぬくもりも。 俺のスーツの肩口には、彼女のファンデーションが微かに付着している。
今日もいつものように日常は過ぎていく。 そして俺は今日も、この愛すべき上司の「恥部」という名の秘密を一つ、胸のポケットに黙ってしまい込み、彼女が作り上げた氷の城を守る騎士となるのだ。
第五章 氷の女帝、羞恥の覚醒と甘い降伏
白々しい蛍光灯が照らすオフィス。その日のフロアは、まるで嵐の前の静けさのような、異様な緊迫感を孕んでいた。 いや、正確には、俺の隣のデスクに鎮座する《氷の女帝》の周囲だけが、重く湿った低気圧の底に沈んでいたのだ。
「……あたま、痛い……」
始業からわずか数分。 キーボードを叩く手を止め、彼女が吐き捨てた微かな喘ぎを、俺の耳は逃さなかった。 その声は、昼間の冷徹な響きとは無縁の、情事に疲れ果てた娼婦のように掠れ、熱を帯びている。タイトなブラウスの胸元が、浅い呼吸に合わせて艶かしく上下していた。
――来たな。記憶の蓋が、内側から溶け出しているのだ。
「二日酔いですか、先輩?」
「違うわよ。……ただの、極度の睡眠不足」
反射的な否定。だが、その白い指先がすがりつくように握りしめているマグカップは、すでに二杯目のブラックコーヒーだ。カフェインという劇薬を流し込まなければ、昨夜のアルコールと情欲に火照った肉体を律することができないのは明白だった。
午前十時。 書類を捲る彼女の指先が、ふと、空中で硬直した。 タイトスカートに包まれた丸いヒップが、椅子の上でビクリと跳ねる。まるで、己の胎内に残された男の痕跡に、今さら気づいたかのような怯え方だった。
「……ねえ」
呼ばれた瞬間、俺の背筋に嗜虐的な悦びが走る。 彼女は俺の方を見ない。PCのモニターを睨みつけたまま、探るように、そして震える声で問いかけてきた。
「昨日の夜……私、何を飲んだかしら」
「ハイボールです」
「……何杯?」
「三杯、ですね」
俺は慈悲深い飼い主のように、数を偽った。実際は五杯。三十四歳の女が、理性の下着を脱ぎ捨てるには十分すぎる量だ。
「……たった三杯で、あんなに記憶が……飛ぶものかしら」 「体調によりますよ。……何か、思い出したんですか?」
先輩の綺麗な眉間に、深い皺が刻まれる。それは、昨夜の淫靡な失態というパズルのピースを、羞恥に顔を歪めながら拾い上げる儀式だった。
「なんか……」
「はい」
「あなたの名前を、その……オスを呼ぶみたいに、呼んだ気がするのよね」
第一のフラグ、作動。
「気のせいじゃないですか? 職務に忠実な先輩が」
「そうよね。勤務時間外に、部下の名前をあんな風に……」
彼女はそこで言葉を飲み込み、血が滲むほど強く唇を噛んだ。
「……でも」
「でも?」
「“名前で呼んで”って……発情したみたいに懇願した記憶が、こびりついて離れないの」
第二のフラグ。記憶の解像度が、残酷なまでに上がってきている。
「……言ってないと思いますよ。俺の記憶では」
「今、コンマ一秒の間があった」
鋭い。頭痛と羞恥に苛まれながらも、女の勘は野生動物のように研ぎ澄まされている。
「それにさ」
彼女は書類を一枚めくり、周囲の耳を警戒するように、ぐっと声のトーンを落とした。
「私……あなたに、すり寄った? その……身体を、押し付けた?」
「……さあ? どうでしたっけ」
「声が、ニヤけてるわよ」
完全に詰んでいる。彼女は小さく咳払いをし、崩れかけた《氷の女帝》の城壁を必死に立て直そうとした。
「……もし、仮によ」
「仮に?」
「万が一、私がそんな痴態を晒したとしても。……それはアルコールのせい。脳のバグよ。決して、私の本心じゃないわ」
完全なる防衛態勢(ディフェンス・モード)。 その、必死に強がる哀れな姿が、俺のサディスティックな支配欲を激しく刺激した。
「でも」
俺はあえて、昨夜の密室で彼女が放った、最も重く、最も甘い決め台詞を口にする。
「先輩、“この顔、私だけのものだから”って、俺の太腿を撫でながら言いましたよね」
言った瞬間、彼女の全身が凍りついた。 ゆっくりと、軋むような動きで、彼女の顔が俺の方を向く。
「……なに、それ」
「先輩の言葉です」
「私、そんな……発情期みたいな台詞、言わない」
「言いました。俺の耳元で、吐息を吹きかけながら」
数秒の沈黙。 それは、彼女のなけなしの理性が完全に崩壊し、圧倒的な羞恥心に蹂躙されるまでのカウントダウンだった。
「……私、そんな、淫らな女じゃない」
自覚がないのが、一番質(たち)が悪い。いや、たまらなく愛おしい。 彼女のうなじから耳たぶにかけて、熟れた果実のように鬱血した赤みが広がっていく。
「あと……」
彼女はついに耐えきれず、両手で顔を覆った。
「“ずるい”って……喘いだ気もする……っ」
「……それは?」
「あなたが悪いのよ。……私の身体を、あんなに熱くさせるから……」
意味不明な供述。だがそれは、女としての完全なる敗北宣言であり、服従の誓いだった。 彼女は指の隙間から、濡れた瞳で俺を上目遣いに捉え、ついに核心に触れた。
「……私、あなたのこと、縛り付けすぎじゃない?」
「まあ、常軌を逸した過保護レベルですね」
「……それって、上司として……ううん、年上の女として、重くて、見苦しいわよね」
オフィスの喧騒が、遠ざかっていく。
「……もし、よ」
彼女は震える息を吐き出した。
「私が……この重苦しい愛情を、そのまま貴方にぶつけたら」
そこにあるのは、傷つくことを恐れる、三十四歳の臆病な少女の顔。
「……迷惑?」
厚い氷の仮面を内側から叩き割る、あまりに脆く、切実な問いかけ。 拒絶されれば、彼女は二度と立ち直れないだろう。自分から逃げ道を作り、捨てられる前に身を引こうとしているのだ。 俺は、思わず意地悪な笑みを浮かべた。
「やめられたら、困ります」
「……は?」
「毎朝のあの重たい愛情(ごはん)、俺の身体が覚えちまったんで。責任、取ってくださいよ」
先輩は一瞬、呆気にとられたように固まり――それから、みるみるうちに顔を真っ赤にして、泣きそうなほど嬉しそうに俺を睨みつけた。
「……バカ。そういう話じゃないでしょ、この変態」
「全部繋がってますよ。貴女の重さも、嫉妬も、朝ごはんも。俺が全部、飲み込んでやります」
数秒の、熱を帯びた睨み合い。
「……」
わずかな間が空き、先輩はプイと顔を背けた。
「……今日だけだから」
「何がですか?」
「……これ」
そう言って、彼女は立ち上がり、資料を取りに行くふりをして俺のデスクの横を通り過ぎた。 すれ違いざま――彼女の豊満なヒップが、俺の肩に、ねっとりと、意図的に押し付けられた。
偶然を装った、確信犯的な接触。 スーツ越しに伝わるむせ返るような雌の熱と、安物のシャンプーの残り香。 そこに残された微かな体温は、言葉よりも雄弁な、「今夜も抱いて」という愛の証だった。
窓の外に目をやる。無機質な灰色の空の下、無数の人間が蠢く東京の街。 けれど、俺の視界は、隣のデスクで頬を染めるこの女の色で、極彩色に塗り潰されている。 俺は今日も、この不器用で淫らな上司が、昨夜の続きを俺のベッドで完全に思い出す瞬間を、甘い疼きとともに待ち続けているのだ。
中編に続く →
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謎のアプリ通知と少女の戸惑い
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性の欲望


蹂躙の夜、再び――元部下は濡れた果実
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【成人向き】蜜の朝餐(デジュネ)~氷の女帝、理性の崩壊~【後編】
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【成人向き】蜜の朝餐(デジュネ)~氷の女帝、理性の崩壊~【中編】
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【成人向き】蜜の朝餐(デジュネ)~氷の女帝、理性の崩壊~【前編】
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【シニア】男と女のお話


『残光の四重奏(カルテット)』
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【シニア】男と女のお話


エピソード●因果の残り香・久美子
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【シニア】男と女のお話


エピソード2 『セピア色の記憶が歪むとき』加奈
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【シニア】男と女のお話


エピソード1『マドンナの帳簿』由紀子
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