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蹂躙の夜、再び――元部下は濡れた果実

蹂躙の夜、再び――元部下は濡れた果実

 現役時代、私は「指導」という名の鞭を振るうことに、暗い悦びを覚えていた。 特に、あの山本という女。入社三年目の未熟な果実。要領が悪く、怯えた瞳で私を見上げるだけの存在。「仕事ができないなら辞めろ」「泣いて済むと思うな」。私の言葉が突き刺さるたび、彼女の白魚のような指先が震える。その姿に、私は管理職という仮面の下で、嗜虐的な昂ぶりを抑えきれずにいたのだ。あれは教育ではない。雌を躾けるための支配。その背徳の蜜の味は、何物にも代えがたいものだった。
やがて彼女は、私の執拗な責めに耐えかね、青ざめた顔で退職届を差し出した。負け犬が尻尾を巻いて逃げ出す瞬間――私は溜飲が下がる思いで、その背中を見送ったものだ。それから二十年。私の記憶の抽斗(ひきだし)から、その名は完全に抜け落ちていたはずだった。
定年を迎え、現役時代の熱が冷めやらぬ私が通い始めたのは、場末の歓楽街に佇む一軒の店。男の渇きを癒やすための、桃色の箱庭だ。 その日、紫煙のくゆらす待合室の奥から、一人の女が現れた。その顔を見た瞬間、私の股間に熱い衝撃が走った。
「部長……。二十年前に辞めました、山本でございます」
かつての怯えた小娘は、いまや熟れきった肉体を惜しげもなく晒し、そこに立っていた。時は残酷であり、かつ甘美だ。目尻に刻まれた皺も、緩んだ肉付きも、すべてが淫靡な陰影を帯びている。気まずさなど微塵もない。私の中に湧き上がったのは、ドス黒く、そして粘りつくような歓喜だった。かつて私のデスクの前で涙を流していた女が、今は私の欲望を受け入れるために、ここに跪こうとしているのだ。
「こちらへどうぞ」
山本はプロの女の顔で、私を個室へと誘う。薄暗い部屋、充満する石鹸の香り。淡々とガウンを脱がせるその手つきに、私は堪えきれず喉の奥で嗤った。結局、お前にお似合いなのは、書類ではなく男の肌を扱う仕事だったというわけか。 滑るような泡の感触に身を委ねながら、私はわざとらしく過去をほじくり返した。 「あの頃は、悪かったな」 山本は妖艶な笑みを唇に浮かべ、私の耳元で囁く。
「いいえ……おかげで強くなれましたから。どこでも生きていける、夜の技を身につけました」
その言葉に、私は確信と共に打ち震えた。壊れたのだ。私が、この女を壊したのだ。「自分はダメな人間だ」という私が刻印した烙印が、彼女をこの花街へと堕とし、そして熟成させた。それを「強さ」と呼び、自分を慰める彼女のなんと滑稽で、そして愛おしいことか。 かつては給料という餌で飼い慣らしていた。だが今は、私が直接札束を握らせ、この肉体を貪ることができる。立場は逆転したのではない。より濃密で、逃れられない主従の鎖が、二十年の時を経て完成したのだ。
事果て、賢者タイムの気怠さの中で会計を済ませると、山本は上目遣いで私を見上げた。
「部長、お体に気をつけてくださいね」
その言葉は、「また来て、私を買ってください」という、雌の哀願に他ならなかった。 ネオンきらめく夜の街へ出た私は、背筋を駆け上がる高揚感に震えた。因果応報などという陳腐な言葉ではない。これは「答え合わせ」だ。無能な部下が辿り着くべき沼に沈み、有能な上司がそれを金で弄ぶ。世の中の摂理を、これほどまでに官能的に味わえる夜があるだろうか。
あれ以来、私はあの店の暖簾をくぐり続けている。指名はもちろん、山本だ。 あの頃、言葉で犯し続けた部下の成れの果てを、今は金と肉体で慰み者にする。これ以上の極上の余生など、どこを探してもありはしない――。

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